2025年8月、法務大臣の勉強会が取りまとめた中間報告では、日本社会における外国人受入れの基本方針について大きな方向性が示されています。
日本の現状
日本では、少子化と人口減少が想定以上のスピードで進んでいます。2024年の出生数は68万人台に落ち込み、これは予想より15年も早く訪れた数字です。
一方、在留外国人の数は急速に増え、2024年には35万人以上の増加となりました。すでに多くの産業は、外国人労働者なしには成り立たない状況です。
この流れの中で、近い将来、日本の人口の10%以上を外国人が占める時代が訪れる可能性があります。
法務省報告のポイント
法務省の勉強会でまとめられた報告書では、外国人受け入れについて以下の視点が示されています。
経済のために
外国人労働者は、少子化で不足する労働力を補うだけでなく、イノベーションや起業の推進役にもなります。
産業ごとに異なるニーズ
高度な専門知識を持つ人材から、現場を支える労働者まで、どの分野にどの程度受け入れるかを戦略的に考える必要があります。
労働環境への影響
外国人の増加が、日本人労働者の賃金や雇用条件にどんな影響を与えるかを検討することが大切です。
社会保障や財政の問題
税収や年金、医療などにプラスの効果もあれば、負担が増える可能性もあります。
地域社会との共生
言語や文化の違いから摩擦が生じるケースもあり、日本語教育や地域での理解促進が課題になります。
治安と安心感
犯罪件数は減少傾向にある一方、外国人が多い地域では「不安感」が広がることもあり、体感治安をどう守るかが問われています。
在留資格の見直し
特定技能や育成就労など、受け入れ枠のあり方を整理し、不法滞在者対策も強化する必要があります。
今後の施策
- **電子渡航認証制度(JESTA)**の導入(2028年度予定)
- 不法滞在者ゼロ計画(送還強化や監視体制整備)
- 永住許可や留学制度の見直しなど
これらは、外国人受け入れを広げながらも、社会の安心を守るための仕組みづくりです。
弁護士の視点から
外国人受け入れの議論は、「労働力不足の解決」と「社会の安定」のバランスをどう取るかが最大のテーマです。
法律面の課題
在留資格制度は複雑で分かりにくく、企業や外国人本人にとって理解が難しい部分があります。透明性のある制度運用が必要です。
人権と地域社会の調和
言語教育や生活支援が不足すると、摩擦やトラブルが起きやすくなります。共生を進める仕組みは「法律」と「地域の理解」の両方が欠かせません。
企業の責任
適切な労働条件を整えないまま受け入れることは、法違反やトラブルの原因になります。企業には大きな責任があります。
まとめ
人口減少が進む中、外国人の受け入れは日本社会の将来に不可欠です。
ただし、それは単に「数を増やす」ことではなく、安心して共に暮らし、働ける仕組みを整えることが大前提です。
弁護士としては、外国人の権利を守りながら、社会全体の安心を両立できる制度づくりを支えることが重要だと考えます。
当事務所は、外国人労務や在留資格に関するご相談に豊富な実績を有しており、企業の受入れ体制づくりから、個々の外国人の権利保護まで幅広くサポートしています。
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