外国人経営者の「経営・管理」ビザ要件が厳格化へ
――資本金要件を3,000万円に引き上げ、不正利用防止を狙う
出入国在留管理庁は、外国人が日本で会社を設立して経営活動を行う際に必要となる在留資格「経営・管理」について、その取得要件を大幅に厳格化する方針を示しました。
これまでの資本金下限額は500万円でしたが、改正案では3,000万円への引き上げが柱となっています。目的は、実態のない企業設立を通じて在留資格を得ようとする移住目的の不正利用を防ぐことにあります。
改正の背景と狙い
現行制度では、
- 資本金500万円以上、または
- 常勤職員2名以上の雇用
があれば在留資格を取得できる仕組みでした。
しかし実際には、事業実態の伴わない申請が少なからず確認されており、入管庁内外から制度の見直しを求める声が高まっていました。
新たな要件案
今回の省令改正案では、資本金要件の引き上げに加え、次のような人的要件も追加される見通しです。
- 経営・管理経験が3年以上、または
- 同分野の修士号相当の学位を有する者
- 常勤職員を1名以上雇用すること
これにより、単なる「形式的な会社設立」ではなく、実際に事業を運営できる体制や能力を有する外国人経営者のみが対象となる方向です。
実務への影響
資本金を3,000万円以上に設定することは、中小規模での起業を目指す外国人にとって相当のハードルとなります。
これまで「日本でのビジネスを通じて在留資格を得たい」と考えていた層は、別の在留資格(たとえば「高度専門職」や「特定活動」など)を検討する必要が出てくるでしょう。
また、既に「経営・管理」ビザを取得している事業者に対しても、更新時の審査厳格化が予想されます。
入管庁は年内に省令を改正する予定としており、今後、パブリックコメントの結果を踏まえて正式決定される見通しです。
弁護士からのコメント
「経営・管理」ビザは、従来から不正利用が指摘されてきた一方で、外国人起業家の受け皿として重要な制度でもあります。
したがって、過度な規制によって優秀な人材の日本進出を阻むことがないよう、適正な運用と審査基準の透明化が求められます。
外国人起業家の方は、今後の法改正に向けて早めに事業計画や資本金構成の見直しを検討しておくことをおすすめします。


