外国人の国民健康保険料未納者への在留審査厳格化(2027年6月開始予定)について
――企業の外国人労務管理に求められる対応――
2025年11月4日の記者会見において、上野賢一郎 厚生労働大臣は、外国人による国民健康保険料の未納防止策を2027年6月から開始する方向で準備を進めていることを明らかにしました。
本稿では、制度の概要と、雇用主に想定される実務上の影響について解説します。
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政府が示した対策の概要
(1) 保険料未納者には在留資格の変更及び期間の更新を原則認めない仕組みへ
厚生労働省は、出入国在留管理庁と連携し、国民健康保険料の滞納情報を在留審査に反映させる制度を設計しています。
- 予定されているポイントは以下のとおりです。
- 未納者については、在留資格変更・在留期間更新を認めない運用を想定
- 市区町村が持つ「保険料納付状況」を入管庁が把握できる仕組みを構築
- 2027年6月から施行する方向で準備中
従来は、保険料の納付状況が在留審査に直接影響する仕組みは十分ではありませんでしたが、今後は社会保険制度の適正利用が在留管理の重要要素となることが明確化します。
(2) 医療費の不払いについても審査に反映
さらに、医療機関から得られる「医療費不払い情報」も入管庁と共有し、中長期在留者の審査に反映させる方針です。
現在は「短期滞在者」(観光客等)への対応が中心ですが、長期在留者にも対象を拡大する方向が示されています。
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制度導入の背景
厚労相は会見において、
「日本人と外国人が互いに尊重し、安心して暮らせる秩序ある共生社会の実現のため、社会保障制度の適正利用を推進する」
と述べています。
背景としては、以下の問題が指摘されています。
- 一部外国人による国保料未納・医療費不払いの増加
- 医療機関の回収負担の増大
- 制度への不信感・社会的摩擦の発生
こうした課題に対応し、公的医療保険制度の持続可能性を確保する狙いがあります。
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企業(雇用主)が受ける影響
今回の制度強化は、外国人を雇用する企業にも直接的な影響を与えます。
(1) 在留更新の遅延・不許可リスクが増加
保険料未納があれば、在留資格の更新ができず、就労継続が不可能となる可能性があります。
現場で想定される事態として、
- 更新申請中に「納付状況の確認」が求められる
- 未納解消に時間がかかり、就労資格証明書の発行が遅れる
- 場合によっては在留不許可・帰国となる
など、企業活動に大きな支障が生じるおそれがあります。
(2) 企業の「適正管理義務」としての説明責任が実質的に強まる
法令上、企業に国保加入状況の把握義務が明示されているわけではありません。
しかし、在留管理が一層厳格化されることで、
- 外国人従業員へ保険料納付の重要性を説明
- 納付状況を本人に確認(任意)
- 生活指導・日本での基本ルールの周知
などの企業側の自主的取り組みが、事実上の必須対応となることが予想されます。
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雇用主が今から準備すべき実務対応
(1) 国民健康保険料の納付状況の定期的な確認(任意)
個人情報保護の観点から、企業が直接自治体に確認することはできません。
しかし、外国人従業員から納付書・領収書・マイナポータル画面の提示を任意で依頼することは可能です。
(2) 入社時の説明強化
入社時・研修時に、
- 国保加入義務
- 保険料の計算方法
- 未納の場合のペナルティ(今後は在留更新不可の可能性)
を明確に説明することで、未然防止につながります。
(3) 未納が疑われる場合の早期フォロー
納付が滞っている可能性がある従業員には、
- 自治体窓口での相談
- 分割納付制度の利用
- 日本語支援
などのサポートを提供することが、企業としてのリスク管理に有効です。
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まとめ ― 2027年6月に向けて企業の外国人労務管理は新たな段階へ
今回の制度改正によって、
社会保険制度の適正利用が在留審査の重要な考慮要素となることが明確になりました。
外国人労働者の在留更新に直接影響するため、企業としても、
- 国保加入・納付状況の把握
- 入社時の制度説明
- 日本での生活ルールの周知徹底
といった管理体制の整備が強く求められます。
当事務所では、
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