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報道のポイント
政府は、2027年4月に施行される「育成就労」および「特定技能」に関し、今後5年間の受入上限を合計123万人(うち育成就労枠は当初2年で約43万人)と設定しました。
「技能実習」の廃止と「育成就労」の本質
これまでの技能実習制度は、名目上の「国際貢献」と実態の「労働力確保」の乖離が激しく、不当な低賃金や人権侵害、ひいては失踪・不法就労を誘発する構造となっていました。 新制度では「特定技能1号」への移行を前提とした「人材育成」が明確に目的化されました。これは、企業側にとって「3年で入れ替わる短期労働者」ではなく、「長期的なキャリア形成を支援すべき正社員候補」として扱う法的・倫理的責任が強化されたことを意味します。
「転籍(転職)」容認による法的リスクの変化
新制度では、同一職種であれば一定の条件(1〜2年の就業や日本語能力等)のもとで「転籍」が認められます。 企業にとっては、「劣悪な環境であれば他社へ逃げられる」という市場原理が働くため、不当な拘束やハラスメントは、即座に「人材流出」という経営リスクおよび「指導・是正勧告」という行政リスクに直結します。
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「不法就労」に関する厳罰化への警鐘
受入枠が拡大する一方で、「不法就労助長罪」の罰則強化(2025年6月施行)は非常に重い意味を持ちます。
知らなかったでは済まされない
123万人という大規模な受入が進む中で、在留資格の確認ミスや資格外活動の放置は、企業にとって「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」という刑事罰を招く可能性があります。
コンプライアンスの二極化
「育成就労」ルートを正しく活用する白企業と、枠から溢れた不法就労者を安易に使う黒企業の二極化が進むことが予想されます。当局の監視は後者に集中しますが、巻き込まれ事故(偽造在留カードの使用など)を防ぐためのデューデリジェンスが不可欠です。
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外国人雇用企業に対する5つの具体的提案
弊所では、企業がこの「123万人時代」を生き抜き、法的リスクを回避するための戦略を提案します。
① 「選ばれるための待遇」への再設計
転籍が解禁される以上、給与、福利厚生、キャリアパスを日本人と同等以上に整備する必要があります。
→特定技能への移行を見据えた「昇給テーブル」の提示、および住居確保などの生活支援の透明化を行ってください。
② 日本語教育・試験対策への「先行投資」
特定技能への移行には試験合格が必須です。合格できなければ、せっかく育てた人材が帰国せざるを得ず、採用コストが埋没します。
→就業時間内での学習時間の確保や、eラーニング費用の会社負担など、試験合格を「会社のKPI」として設定してください。
③ 監理支援機関の厳格な選定と評価
従来の監理団体は「監理支援機関」へと厳格化されますが、不適切な手数料徴収を行う機関も依然として存在し得ます。
→監理支援機関に対し、「送り出し機関への手数料の透明性」や「転籍希望者への対応方針」を文書で確認し、共倒れのリスクを防いでください。
④ デジタル化による在留管理の徹底
123万人という規模の拡大は、管理の複雑化を招きます。
→在留期限の自動アラートや、在留カードICチップの読み取り確認を行うシステムの導入を「必須の防衛策」として検討してください。
⑤ 内部通報・相談窓口の多言語対応
人権侵害やトラブルが表面化する前に把握することが、転籍や法的紛争を防ぐ唯一の道です。
→外部の弁護士や専門機関を活用した「多言語相談窓口」を設置し、経営陣が現場の声を直接拾える体制を構築してください。
総括
「123万人」という数字は、日本経済が外国人材なしでは立ち行かない現実の裏返しです。これからの企業に求められるのは、単なる「コンプライアンスの遵守」にとどまらず、「多様な背景を持つ人材をマネジメントし、定着させる経営能力」です。
新制度への移行期は、制度の隙間を突いたトラブルが発生しやすくなります。雇用契約書の作成から、トラブル発生時の対応まで、予防法務の観点から万全の備えを進めることを推奨いたします。


