出入国在留管理庁は、2026年3月9日から、派遣の形態で働く「技人国」の外国人材について、派遣元と派遣先の双方に「単純労働に従事させない」ことを確約する誓約書の提出を義務付ける方針を固めました。
今回の運用変更の背景と法的意義
今回の運用変更は、事実上の「偽装派遣・不法就労」に対する包囲網の強化です。
これまでも、技人国で入国した外国人を工場でのライン作業や飲食店のホール、建設現場等の「単純労働」に従事させることは入管法で禁じられていました。しかし、派遣形態の場合、入管庁が派遣先での実際の業務を把握しにくいという盲点がありました。
今回の誓約書導入により、以下の法的な責任が明確化されます。
① 在留諸申請の不許可等のリスク
実態と異なる業務に従事させていたことが判明した場合、外国人の在留諸申請が不許可となる可能性が高くなります。
また、悪質な場合は、在留資格取消しや、企業側が不法就労助長罪(5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、または併科)で立件される場合もあります。
② 派遣先の責任明文化
派遣元だけでなく「派遣先」にも誓約を求めることで、受け入れ企業側のコンプライアンス意識を強制的に引き上げる狙いがあります。
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外国人雇用・活用企業への具体的提案
この運用変更は、適正に運用している企業にとっては事務負担の増加ですが、曖昧な運用を続けてきた企業にとっては甚大な経営リスクとなります。
① 職務内容の「棚卸し」と「再定義」
派遣先企業は、技人国の人材が実際に行っている業務を再確認してください。
実務上、グレーゾーンとなるケースとしては、
翻訳・通訳として採用したが、実際は1日の大半を倉庫での梱包やピッキングに充てている。
というものが考えられます。
このようなケースでは、業務のメイン(50%超)が学術的知識を必要とする事務・技術職であることを確認し、付随的に発生する現場作業は最小限に留める必要があります。
② 派遣契約書・就業条件明示書の適正化
誓約書の内容と、実際の派遣契約書に齟齬がないか確認が必要です。
→契約書内に「本業務は在留資格『技術・人文知識・国際業務』の範囲内であることを相互に確認する」といった条項を盛り込み、業務範囲を厳格に定めてください。
③ 「特定活動46号」への切り替え検討
もし、現在の業務にどうしても一定の現場作業(接客や製造ライン等)が含まれる場合、日本の大学を卒業している等の要件を満たせば、より業務範囲の広い「特定活動46号」への変更を検討すべきです。
- 実務上の注意点:3月以降の申請から適用
2026年3月9日以降、新規の在留資格認定証明書(COE)交付申請や、在留期間更新・変更申請において、以下の対応が必要になります。
- 提出書類の追加: 入管庁指定の様式による誓約書の作成。
- 監査体制の強化: 万が一、現場の独断で単純労働をさせてしまった場合、会社全体が指名停止や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。定期的な社内ヒアリングや、派遣元との連携を強化してください。
弁護士のアドバイス
「人手不足だから」という理由は、不法就労助長罪の免責理由にはなりません。今回の誓約書提出は、入管庁からの「ラストリマインド(最終警告)」と捉えるべきです。
貴社の現在の受け入れ状況について、在留資格の範囲内かどうかの「リーガルチェック(業務実態診断)」を実施することをお勧めします。


